top of page

在米日本人インタビュー:San-J International社President、佐藤様


自己紹介をお願いします

  • 育った場所は東京。家業の所在地は三重県

  • 新卒で味の素に就職。営業として6年間勤務。福岡支店で働いていた

  • 味の素を退職後、家業に戻った

アメリカに来る前の経歴について、教えて下さい

  • 2001年にアメリカに移り、家業の子会社のSan-J International社でPresidentとして働いている(会社のWebsiteはこちら:https://san-j.com/)

  • 醤油を中心に、アメリカで製造から販売まで行っている


アメリカに来る前の海外経験はどのぐらいか

  • 中学校時代に初めて海外を経験。アメリカに2週間程度滞在

  • 大学以降、海外旅行で行くことはあったが、海外に住んだことはなかった

アメリカに来る前、英語はどれぐらい出来たのか

  • 29歳でPresidentとして子会社に移ってきたが、言語の壁に加えて、大半の人が自分より年上でもあった。味の素では若手としての勤務だった為、管理職の経験はなく、製造や会計についても未経験だった

  • 営業関連の話等、得意分野で会話を組み立てることを意識していた。専門分野だと、英語が完全に理解出来なくても、勘所はわかる

  • 未だに、医療関係の話等、単語が分からない場面では苦労する。また、バーでのカジュアルな会話も不得意。苦手な場面は避けることが重要

今現在はどんな仕事をしているか

  • 製造や会計は知見がある従業員に日々の業務をマネージしてもらっている

  • 自分が今使っている時間の大半は営業とマーケティング。直近特に力を入れているのは、営業管理。数値ベースで活動と成果を把握して、次のアクションに繋げることを意識。スーパーに対してTrade Discountを提供して値引きをした場合に、どれだけ数量が増えるか等、データ分析を行っている。膨大な量のデータ分析となる為、知見があるDeloitte出身の人物に手伝ってもらっている。元となるデータはPOSデータをデータ会社から取得している

  • 当社は大企業ではなく、限られた原資をいかに効率的に使うか常に考えている。期待する効果と結果をデータによって捉えて、最小限の投下で最大限のリターンを出したい

  • 過去2−3年はブランディングに注力。同業界には、シェアが53−55%程度を有する巨人、キッコーマンがいる。正面から競争しては物量で押しつぶされるので、ブランディングで自社を際立たせる必要がある。キッコーマンが、アメリカで醤油を広めてくれた。アメリカの消費者がキッコーマンを知っていることを出発点として、San-Jの商品は彼らとは違うことをアピールしている

アメリカでの創業に関して

  • 父親がアメリカに来たのは1970年代。長男が家を継ぐ慣例であった為、次男であった父親はトヨタに入社し、営業の仕事をしていた。アメリカでの海外営業を担当していた時に、高校の同級生であったロッキー青木氏が経営していたBenihana(日本食レストラン)をよく訪れていたという。そこで父は、醤油といえば寿司という時代に、醤油で味付けした肉やロブスターをアメリカ人が美味しそうに食べるのを見た。醤油は肉を味付けする調味料としても、アメリカで展開出来ると着想を得て、アメリカ進出を決意

  • San-Jの進出時点で、キッコーマンはすでにアメリカに工場を持っていた。巨大なキッコーマンとの差別化を考えた時に、1970年代当時、全盛だったヒッピーに着目した。缶詰や電子レンジが普及し、人々の食生活は合理化の道を進んでいた一方、和食は四季折々の食材そのものの味を大切にしていた。ヒッピーの中には、和食に共鳴する人たちが多かった。ヒッピーに対して醤油を販売していくにあたり、添加物を使わず、オーガニックな商品を開発した

  • 有機食品を展開したのは、図らずも時代を先駆けることとなった。ヒッピー文化が強い街、Austinを発祥とするWholefoodsが出来たのが1978年。スミソニアンの歴史博物館にフードセクションがあり、Counter cultureがアメリカ人の食に影響してきた、という経緯が触れられている

発酵ブームに関して

  • 発酵への関心がアメリカで高まっている。インスタで発酵について発信を始めたところ、フォロワーが6万人に達した。発酵に関して英語で発信したことが差別化となった

  • 少し前に流行した、Clubhouse経由で日本の醸造家と繋がることが出来た。日本の醸造家は良いものを作っているのに、売上が伸びず、倒産するところも多い。発酵に興味があるアメリカと、日本の醸造家を繋ぐことが出来れば皆がハッピーになると思う。自分が宣伝役になって、発酵といえば日本だという認知を広げたい。直近、ジョージタウン大学では、マルコメの副社長を招いて講演してもらった。マルコメ程の規模の会社でも、この様な機会は初めてだったとのこと

  • 欧米で発酵が有名になった火付け役はNOMAというデンマークにある有名レストラン。ミシュラン三つ星で、世界のグルメに関するランキングで何度も1位になった、名実ともに世界トップのレストラン。このレストランは、デンマーク料理に発酵を取り入れたことで、注目を集めた。正統派のものを美味しく作るだけでは成功できない時代であり、発酵が選ばれたのだと思う

  • 日本では、東京農業大や、キッコーマン、マルコメ等、素晴らしい知識を持っている組織があるが、英語での発信が十分でない。これだけ発酵がアメリカで盛り上がっているのに、日本人や日本企業が関われないのはもったいない。実は、ワインの発祥はフランスやイタリアではなく、ジョージア(グルジア)。発祥はグルジアなのに、生産量ではフランス・イタリア・アメリカの遥か後塵を喫する。日本食として有名なラーメンだって、元は中国の料理。発祥国が、ビジネス的に成功できるかは別問題。

  • 発酵をメジャーにする為の取り組みは、回り回ってSan-Jの醤油の売上に貢献するかもしれないが、主な目的は人助け。

  • 日本で発酵の経験者をアメリカに呼び込むことを考えたが、会社のキャパシティに限りがあり、沢山の人を受け入れることは難しい。そこで、アメリカ人に発酵の現場を見て、アメリカに戻ってから広めてもらうという、「発酵ツーリズム」を企画している。記者や大学の先生、シェフを招いて、アメリカで発信してもらっている。日本人が日本のアピールをしても信用度がやや割り引かれると思われ、アメリカ人に日本の発酵を、アメリカで広めてもらうことに意義があると思う

なぜリッチモンドに工場を構えたのか

  • アムトラックの本線、空港、I-95があり、交通の便が良い。Norforkは大きな港であり、物流が良好

  • 気候が日本に比較的近く、湿度が高め

  • アパラチアがあり水の質が良い。当時、バージニアはNYに次いでワイナリーが多いエリアだった

  • 敢えて日本人が少ない場所を選びたかった。日本人が多い場所で会社を構えると、日本人相手の商売をしてしまう。元々当社の日本人内での知名度は高くなく、日本人コミュニティに期待していなかった

  • 当初からアメリカの消費者を重視する戦略は、オーナー企業だからこそやりやすかったと思う。大企業だと、海外進出初年度から売上を期待される為、日本のパッケージを踏襲して英訳し、在外邦人をターゲットにすることとなる。しかし、アメリカにいる日本人は在留登録ベースで50万人程度。アメリカ人のCensusでも150万人程度。間をとって100万人とすると、世田谷区の人口と大して変わらない。最初に楽な道をとると、袋小路にはまると思った。そしてこれは、多くの日本企業が海外進出の際に陥るトラップ。最後に100万人の壁にぶち当たってしまう

  • 最初に日系スーパー向けに営業すると、営業や経理で日本人を雇い、オフィスがLittle Tokyo化する。そうなると、商習慣が異なる現地スーパーに販売することが難しくなる

今後達成したい夢、目標はあるか

  • San-Jのビジネスを伸ばしていく。現状アメリカでの会社のシェアは9%程度だが、倍にしたい。ヨーロッパ、中国への展開も考えている

  • 発酵をアメリカで広げていきたい。醸造メーカーが最終的に気にするのは売上が立つかであるが、綺麗事だけで終わらないように、売上面でもサポートしたい。San-Jは全米ほとんどの大手チェーンと取引があり、1万7000−8000件に配架。このインフラをSan-J以外にも使えるのではないか。Retailと商談が出来る営業組織と関係性を他社にも開放。最近試験的に始めている

  • Kimono Momというインフルエンサーがいる。インスタで250万人。Youtube等のフォロワーを足すと600万人程のフォロワーがいる。彼女が企画しただし醤油の販売を手助けする為、San-Jの展示会のブースに来てもらい、Wholefoodsでの販売が決まった。これを一つの成功事例として、海外進出を狙う日本の醸造家に広げていきたい

  • このモデルでは、San-J自身も問屋として商流に入ることで、Win winの関係を築ける。当社が商品ラインナップを広げるのも一つの選択肢ではあるが、規模的に難しい面もある。また、愛を持って商品をどれだけ語れるか?という点は重要だが、愛を広げるにも限界はある。それなら、みりんを心から愛する、みりん屋さんに来て、彼らの営業やPRのリソースを使った方が良いと考える

その他何か一言あれば

  • あまり考えすぎずにとりあえず来れば良い。自分自身、英語は出来ず、会社の中に知らないFunctionもあったが、尻込みせず、飛び込んでみた。そうすると、次のアクションは自ずと見えてくる。案ずるより産むが易し

トップ画像はAdobe Fireflyにて"Richmond Soy Sauce "で生成

閲覧数:204回

Comments


bottom of page